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農業と金融のかかわり方
- 渡辺
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その後、1995年に大阪勤務になりましたが、この年は大きな出来事がたくさんありました。1月17日に阪神大震災、3月には地下鉄サリン事件、4月にはドルの80円割れが起きた。8月には木津信組が破綻し、取り付け騒ぎが起こり、昭和2年以来の金融恐慌が起こりました。支店の窓口に預金者が殺到し、日銀から運ばれてきた1億円が行方不明になる事件もありました。そのような出来事を記者として目の当たりにして、そこで私と金融のつながりがでてきた。担当でもあったので金融のことも勉強することになりました。8月30日の6時のNHKのニュースで、当時の武村大蔵大臣が、「これで不良債権問題は終わった」と宣言をしました。しかし、実はその後、山一の自主廃業やりそなの問題、UFJと三菱の統合などが起こった。1995年は金融不安の第一幕でしかなかったわけです。
- 岡本
- 1995年は時代のひとつの変化点だった気がしますね。
- 渡辺
- もっと言えば近鉄の野茂が大リーグに行ったのもこの年でした。
- 田中
- 日本のプロ野球選手としては、実質、第一号ですね。
- 岡本
- まさにこのころから本格的なグローバル化が進む、象徴的な出来事ですね。
- 渡辺
- 私にはとても忙しい年で、たぶん一生で一番働いた年だと思います。2003年、38歳で会社を辞めさせていただきました。いくつかやりたいことはあったのですが、そのときは農消資本をやろうと思っていたわけではありませんでした。ただ、宮崎と大阪での経験から、農業と金融はずっと心にひっかかるテーマではありました。
2005年に『農業と経済』という専門雑誌に農業金融についての論文を発表する機会がありました。農業の金融というのは基本的には国策金融です。全部、国がやってくれる。それに疑問を呈し、民間のファイナンスが活用されるべきであるという内容を執筆しました。規制産業の代表の農業が自由化されればマンゴーや佐藤錦のように競争力を発揮できる。本来、活力というか、生き残る力はあるんですよね。農業の自給率は4割ちょっとと言いますが、あれはあくまでカロリーベースです。
金額ベースだと自給率は70%です。なぜ、4割ばかりが取りざたされるかというと、そのほうが得をする人がいるということです。農水省の役人や農協など補助金産業の人たちで、国民に補助金の有用性を説くためです。ところが、農家にとって生産カロリーの向上なんか、どうでもいいのです。農家も経営ですから、売上や最終利益のアップを考えているわけで、経営の視点では金額ベースで考えるのが至極当然のことです。一方、廉価品もなければいけないお米などは、大規模化の遅れで価格が高止まりしているのが現状で、価格の多様化が不十分な状況です。
- 岡本
- 金額ベースの自給率が高いということは、要するに付加価値の高いものが多いということですね。
- 渡辺
- そうです。経済の少しわかる人だと70%という数字を聞くとびっくりする。「そこそこ、がんばってるじゃないか」という感想を持つのですね。農業に民間の資本をもっと入れて、商品の高付加価値化を進めれば経営の効率も上がる。「農外資本」という言葉があるんですが、農業者以外の資本のことをいいます。これを排除しようという傾向があるのです。
- 岡本
- それはどんな背景があるのですか?
- 渡辺
- 少し歴史的な話をしますと、戦前は大地主がいた。そして戦後、小作人に農地解放をした。大地主はいわゆる大資本家だったわけですよね。土地がすべてですから。開放した農地を再びほかの資本家や金持ちが買い占めてしまったら意味がありません。このため、農外資本を締め出したわけです。農業従事者以外の人が農地を持てないようにした。農地法にそれを組み込んだのです。小作人は小資本ですから、補助金や国策金融に頼らざるを得ない。当時、小作人は概して貧乏でした。そういうなかで、農村も社会主義化する傾向があった。それを抑制するために自民党はカネをつぎ込み続けなければならなかった。その結果、統制経済下の農業が定着してしまったのです。
- 岡本
- そして、そこに農作物の自由化という波が来たわけですね。
- 渡辺
- そうです。最初は「輸入自由化などとんでもない」と言っていましたが、まあ、少しずつ自由化も受け入れていかざるを得なくなってきた。21世紀になって農外資本という言葉も徐々に過去の遺物となりつつあります。私は農業のアウトサイダーとして、農地と農業経営に対して違った見方をしています。農地から生れる農作物はいったい誰のものかといえば、それは消費者のものです。だから、農業は消費者のために行なわれなければならない。当たり前といえば当たり前です。消費者は農作物を手に入れるために資本を投下する。これは東インド会社と同じことです。インドの香辛料を手に入れるために東インド会社に投資をした。船が難破するというハイリスクがあっても、良い物を手に入れるというハイリターンを求めた。あくまで目的は香辛料であってキャッシュではなく、結果として消費者ニーズのあるモノを手に入れたらキャッシュも儲かったのです。それを考えても農外資本を入れないというのはおかしい。
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