農業に新風を吹き込むp3

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むしろ、消費者の資本を農業に入れるべきではないかと思うのです。そのような内容を論文に書いたわけです。
岡本
なるほど、株式会社の原点ですね。

農家から農社へ

渡辺
農業は消費者が出す資本と農業経営者の持つノウハウのジョイント・キャピタルだと考えられるわけです。そこで、農家の「農」と消費者の「消」が「資本」を介して事業を行なうということで農消資本というコンセプトにしたのです。
田中
うん。よくわかります。
渡辺
それからもうひとつ。いま、「農家」といいますが、これは農業をする家ですが、もう、この少子化の時代に、農業を行なう主体として家という単位はなくなっています。何代も続く蕎麦屋さんでも、いまや株式会社になっている。農業をする家などというのは、時代錯誤もはなはだしい。農業をする会社、略して「農社」が主体であってほしい。商業をするのが商社、販売をするのが販社、だから農業をするのが農社です。農消資本で成り立つ農社が主体になるのが、これからの農業のあり方だと思います。このような考えに至ったのです。
岡本
非常に理にかなったコンセプトだと思いますが、具体的にはどのようなリターンが得られるわけですか?
渡辺
貨幣経済ではカネとカネを交換します。昔は物々交換でした。その中間にあるのが、金・物交換です。投資家からはキャッシュを出してもらいます。一方、リターンはモノです。米や野菜はわれわれが必ず必要とするものです。命を守るためには農産物が必ず必要です。ある意味、農産物はカネよりも大切かもしれない。
岡本
リターンとして農産物を支払うということですね。
渡辺
そうです。たとえば10万円の投資をしてもらいます。それに対して毎年5キロ分の米を支払います。5キロの米は約3000円ぐらいですから、ほぼ3%程度のリターンを得られる。
田中
いずれにしても買わなければならない米をもらえるのであれば、リターンをカネでもらってそれで米を買わなくてもいいわけですからね。
岡本
しかも、利子・配当の源泉徴収もないですね。
渡辺
一方、農社のほうは支払う米を原価で取得できるわけですよね。小売価格は3000円でも、原価はその30%ぐらい、宅配便の費用を入れても50%ぐらいですむわけです。したがって、3%のリターンといっても農社にとってのコストは1.5%ぐらいになります。仮に銀行から借りた場合、2.5?3%であれば1%ぐらいの金利コスト削減になる。消費者も農社もメリットがある
田中
ウィン・ウィンの関係だ。
渡辺
これが成り立つのはフェース・トゥ・フェースのリレーションシップ・インベストメントだからです。お互いの信頼があるから初めて取引が成立する。疑いだしたらエイジェンシー・コストがどんどん上がっていくのは経済学の教える通りです。これは農業でなくても使える手法ですが、特に農業は消費者の命を支えるものですから、うまく機能するのだと思います。
岡本
そのようにして調達した資金はどのように使われるのでしょうか。
渡辺
やはり一番多いのは銀行借り入れの返済ですね。もちろん、運転資金、農機具の購入などもあります。目的は資本構造の多様化です。
岡本
出資の形態はどのようなものになるのですか?
渡辺
一番多いのは債券です。3年満期が普通ですが、満期がきても、ほとんど、そのまま借り換えられます。また、一部には株式への投資もあります。まあ、債券のほうがやりやすいですね。株式の場合、議決権の問題などもありますし。
岡本
なるほど。要するに間接金融の資金を銀行経由で取り入れるのではなく、直接金融化するということですね。
渡辺
そうです。デットか、エクイティかという区分けはそれほど重要ではなく、あくまで出し手が誰かという点が重要なのです。そのような視点で見ていただきたいです。
岡本
そリターンは米だけですか?
渡辺
そうとは限りません。野菜もありますし、桃などもあります。まだまだ、本当に始まったばかりで、実際に実現しているケースは微々たるものですが、これからどんどん普及してほしいと思っています。
田中
協会の役割は?
(→次頁へ続く)