書評

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ピーター・バーンスタインは資産運用理論の伝道師と言われている。インベストライフでも紹介したことのある「証券投資の思想革命」の著書でもあり、著者の山口氏は「米国の投資実務の業界のなかで、“哲学者の七賢人"を挙げれば、彼は間違いなくその一人である」と評している。私もまったく同感である。

そのバーンスタイン氏が2009年6月に逝去された。90歳という、歳にとって不足はないとは言いながら残念なことだと思う。CFA協会の年次総会などで聞く氏の話はいつも若々しく示唆に富んでおり、その知的指導者を失ったことの打撃は大きい。本書は氏の遺作である。

「証券投資の思想革命」でもそうであったが、「アルファを求める男たち」でも、単に証券投資の理論を解説するのではない、「人間」を感じることができる。どのような革命的な理論であれ、実務への応用であれ、それを実現するのは人間に他ならない。それも、超人的というよりは、結構、普通の人たちなのだ。町工場ですばらしい職人的技術を持つ職工さんが、駅前の居酒屋で一杯やっていると同じような面がある。そんな感じをこの本でも感じる。

特に私にとって第十章の「バークレイズ・グローバル・インベスターズ(BGI)?我々の事業は福音伝道師のようなものだった」は感動が深い。私はこの会社で1990年から2005年までの15年間を過ごした。本書に登場する、フレッド・グラウアーは現在のBGIの「中興の祖」だが、私を採用してくれた人でもある。フレッドの後継者、パトリシア・ダンはボードビリアン夫婦の子どもとして生まれ、テンポラリーの秘書として入社、BGIのトップにまで登りつめた人だ。

その他、本書に登場するほとんどの人は私にとって親しみをこめてファースト・ネームで呼び合う人たちである。インデックス運用オンリーのビジネスからいかに脱却し、クォンツ・アクティブ運用を広めていくか、機関投資家市場のみだった顧客層をiShares部門の設立により個人部門へ参入していくか、そのようなことが毎月開かれる経営委員会で激論が戦わされたことが懐かしく思い出される。みんな、普通に悩み、苦しみ、喜び、有頂天になり、間違いを犯す人たちだった。しかし、夢に燃えて懸命に仕事をして夢を実現させ続けてきた人たちだった。

本書はまったくの投資初心者にはちょっと難しいだろうと思う。しかし、中級レベルを目指す人には是非、チャレンジしてもらいたい教材だと思う。そして、投資の世界も結局、普通の人たちが夢を抱き、努力して築き上げてきたものであるということを実感していただければと思う。(岡本和久)

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